今を生きている若い世代を羨ましいと思うのは自己主張できるツールが売るほどに存在していることだ。SNSを駆使したセルフプロデュースはプロ顔負けのアイデアで煌びやかだが、主人公である本人自身の姿はどれも同じに見えてしまう。美しく可愛く魅せようと修正アプリで造り替えたルックスは金太郎飴のようで気持ちに響かないが、それでも世界にアピールできるだけ100倍幸せ。1980年代、平和ボケと言われた私たちの世代は社会にアピールするツールなど皆無だった。あえて言うならTVオーディションに応募するか、原宿の竹下通りを歩いて胡散臭いオッサンにスカウトされるくらいが関の山だったが、そういう他力本願は競争率も限りなく高かった。2000年以降になると他人と交流できるツールが溢れ出したが、人々の欲求は電子メールの便利さを超えたLINEやツイッターなどに移行していく。不特定多数とのやり取りが可能となった今では自己主張の応酬(相手に対する寛容がない独り相撲)に終始し、インスタグラムやフェイスブックは自己確認の昇華ツールとしてその取り巻きや仲間にオートマチックで紹介される。21世紀の人類はプライバシー(Privacy)を剥がされながら日々生きていく悲しい運命だ。「明日の風」「原題:Carry On Till Tomorrow」 バッドフィンガーhttps://www.youtube.com/watch?v=sC24GI9V_Cs
1990年3月に行われた第62回米国アカデミー賞授賞式。作品賞の本命は「フィールド・オブ・ドリームス」(Field of Dreams)であるべきだと映画評論家の”おすぎ”が盛んにTVで推していたことを思い出す。主演のケビン・コスナーは1987年の映画「アンタッチャブル」ですでに世界に知られた俳優だったが、当時はインディペンデント製作の映画でオスカーが獲れる時代ではなかった。映画の内容をここで書き立てても詮無いので割愛するが、米国MLB機構は2020年8月13日からアイオワ州に残されている「フィールド・オブ・ドリームス」の舞台でメジャーの公式戦を行うと発表した。ヤンキース対ホワイトソックスの3連戦は映画で使用された球場の隣にスタジアムを建立するという。あのトウモロコシ畑から選手が登場するシーンも再現されるというニュースにファンならずとも生で観戦したい衝動に駆られるが、2020年8月といえば日本の東京五輪が世界の注目を一身に浴びる時期である。個人的な関心から言うと行ったことのないアイオワ州(因みにアイオワにはMLB球団がない。)で伝説のベース・ボールゲームを味わうほうが100倍健全だ。米国のサービス精神から想像するとケビン・コスナーによる始球式は絶対外さないだろう。
おまけで紹介するのはスージー・クワトロ。彼女は1972年、ソロアーチストデビュー後、1973年にシングルカットされた「キャン・ザ・キャン」が米国以外で大ヒット。その楽曲の持つリズムとメロディが日本でも大うけしてアイドル歌手に歌わす際の参考(盗作ではない。)にされた。黒のジャンプスーツで身を包み、ベースを弾きながら歌うスージー・クワトロはいまだ現役でプレーしている。2015年のスージー・クワトロ「Can The Can」御年65歳。https://www.youtube.com/watch?v=-JhjAreMKfU
第3日目は「L.Aの歌姫」と言われたリンダ・ロンシュタッド。1969年、23歳でソロアーチストとしてデビューしたが、当時はカヴァーシンガーとして人気があった。そんな彼女が全米に知られるようになったのはビルボード1位を獲得した1974年のアルバム『You`re No Good』 (邦題:悪いあなた)。その後、オリジナルも加えた1978年の『 Living In The U.S.A』 (邦題:ミス・アメリカ)は日本でもヒットした。私がリンダ・ロンシュタッドを知ったのは1976年に発売された『 グレイテスト・ヒッツ』 からだが「悪いあなた」を歌う彼女の唸るような歌い方をしっかり盗ませてもらった。彼女の最大の魅力はそのパワフルさとあまりにかけ離れたカワイさにあったわけだが、当時彼女のバックバンドだったメンバーがその後<イーグルス>という名で名盤「ホテル・カリフォルニア」 を生んだ。AOR の礎を築いた一人であるリンダ・ロンシュタッドは現在73歳、難病であるパーキンソン病と闘っている。
第2日目はフィル・コリンズ「アゲインスト・オール・オッズ」(邦題:見つめて欲しい)1984年、映画「カリブの熱い夜」のラストシーンを飾ったこの楽曲はビルボード1位を獲得してフィルコリンズ最大のヒット曲となった。日本ではあまり話題にならなかったものの、その後「イージー・ラヴァー」や「恋はあせらず」などのヒットナンバーを連発。元々はジェネシスのドラマーとして活躍していたが、ソロアーチストとして名声を得た。「カリブの熱い夜」の主演女優レイチェル・ウォードをより際立たせた「Against All Odds」。珠玉の名曲はいつ聴いても新鮮さを失わない。