サザエさんとボーナス13万円
東芝社員家族の恨み辛みを綴った週刊誌は、昔なら同情もされたのでしょうが、現代社会では逆に作用します。電子版を読むと、家電メーカーの東芝は粉飾決算会計の不正が発覚した後、経営危機から脱却するために、社員の給与を大きく改定することになります。ある家族の毎月の給料は3万円減り、ボーナスが50%カット、世帯主である夫の年収は一気に180万円も下がり、奥さんは職探しに奔走することになったそうです。でも普通の感覚で言うと、この家族の年収は一体幾らだったのかと羨望と嫉妬で頭の中が巡るのですが、180万円という数字は現代の非正規社員の年収ですし、パートはさらにこれを下回ります。勿論、東芝社員の収入は家族単位での数字ですが、年間180万円下がっても、とりあえず生活できる給与レベルに、東芝がどれだけ社会的に一流なのかを知る上では大変参考になります。この話の主人公である東芝社員Aさんの奥さんは言います。「会社の不正で関係ない私たちがこんなに嫌な思いをするなんて、割に合わないと思います。お給料も下がったし、イメージも最悪になった今、どこか別の会社に転職したっていいのに夫はそれをしない。会社は何もしてくれないのに…」このセリフには前段があります。奥さんと親との会話が象徴的でドラスティックなのです。「そうか、相手の男の職業は東芝さんか。それなら年金や福利厚生も充分だろうし、倒産もないだろうから、ぜひ結婚してくれ」なるほど、昭和の時代まではこういう会話が通用していました。私も大学時代に就活した経験から、痛いほど会社のブランド力が己の人生に多大な影響を与えることを実感させられました。しかし、そこに到達するまでにしなければいけないことを怠った私は遠回りの人生を余儀なくされます。東芝の不正発覚以来、住宅ローンを安いタイプに変更しようとした奥さんは大きなショックを受けることになります。余裕で通過すると思っていた審査が通らなかったのです。「以前は金融機関で『夫は東芝です』と言えば、どんな審査でも間違いなく通してもらえました。それなのに、今はまったく信用がなくなってしまった」いかに信用が人の人生を左右するかが分かる事例です。日曜日の夜『サザエさん』を見ながら「これだけが今俺たちを照らしてくれる光だ」 Aさんのつぶやきに「冗談じゃない『サザエさん』のスポンサーなんか今すぐ降りて私たちに還元してよ」奥さんの怒りにAさん一家の縮図が透けて見えるのでした。「男にはカネに代えられない<誇り>で生きている部分がある」なぁんて昭和の青春ドラマで育ってきた世代にはキビシィ─話なのでした。因みに不正発覚後のボーナスは13万円。(縮図の意味:現実の様相を、規模を小さくして端的に表したもの)東芝「サザエさん」から降板。48年間に渡り提供。
https://www.youtube.com/watch?v=y6fu6PYLlyw
2017年11月06日 16:42