バブル時代の戦友
東京で仕事をしていた人間たちにとって1990年前後はバブル真っ只中でした。実質的バブルは1986年から1991年までの51か月間と言われているのですが、私的にはムーンベースカンパニーという音楽制作会社を設立した1988年から1993年辺りまでがバブルだっかなと思うものの、先日その頃一緒に戦っていたバブル騎士の一人である作曲家からSNSが届きました。なんでも数年前に東京から遠く北海道に移住して引き続き音楽の仕事をしているのだとか。ネット環境がその人の将来に対する選択肢を柔軟にさせた良い例だなと読みながら思ったのですが、一方でバブル時代に共通する特別な達成感と虚脱感をずっと引きずりながら生きている事も事実です。「これはバブルと言って今年いっぱいまでで景気は終わるそうだよ」誰かが私の耳元に吹き込んだのは、日経平均株価が38,915円となった1989年の暮れでした。それまでの私はというと、ひっきりなしの仕事のオファーに疑念をもつどころか「やっと実力が評価されてきた」から「これがオレの実力だ」に変化していた時期でした。なんと生意気で態度のでかい奴だと思った人は多かったことでしょう。一度ノリノリになってしまうと見えていたことも見えなくなる悪い癖が顔を出していたのです。「オレの実力」がただのバブルだったのか、未だにはっきりしない虚しさは経験した者にしかわかりませんが「バブル景気」上での仕事に贈られた褒美は、薔薇色の香りを胸いっぱいに嗅ぐ達成感でしたし「バブル崩壊」後の虚脱感は、刹那色した大きな石ころが無理やり口の中に入ってくる感覚でした。ゴムが焼けたような匂いの東京を充てなく彷徨いながら、日ごとに消えていくスケジュールに寝覚めの悪い夢を見ているようで、身動きがドンドン取れなくなっていく自身のチカラの微塵さに嫌気がさした1993年は、会社設立5年目のまだまだ青臭い34歳でした。あれから4半世紀が経ちますが、私に関わってくれた人たちの現在の日々が幸せであるようにと願うばかりです。1980年代 NTT「ポケベル」のCM。
https://www.youtube.com/watch?v=EpxmB1e0FKA
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