CMソングの商品化
ほとんどのTVCMには音楽がバックで流れますが、その音楽を制作する職業に関心のある人はあまりいません。CMは時にヴォーカル入りで商品を訴求する場合もある(今では主流になりました)のですが、TV創生期から1980年代にかけてのCM音楽は、その商品のためだけに作曲されていました。CM映像が15秒の場合、音楽は13.5秒で仕上げられるのですが、作曲家はスタジオミュージシャンに演奏させて、秒内にレコーディングを完了させます。20代半ばで業界に入った私は、CM音楽を見事に仕上げるプロの仕事を肌で体感させられました。あまりの素晴らしい仕事の存在に、それを素に短編を書いたこともある私にとって、『電通、CMソングを商品化 専門チーム設置』とする本日の日経記事に「マジ?」と目を疑います。広告代理店最大手の電通は、社内において作詞作曲できる社員をチームで構成し、CDを販売したり音楽配信したりする事業を始めるそうです。この分野は、私たちプロの制作会社が代理店側からのオファーにより、任されていた仕事です。かくある業種の中でも特殊で専門性と感性を要求される音楽制作会社は、ある意味誇り高き職種。広告代理店が自前で作曲(楽器なしでもPCで容易にできます)してしまえば、オファーの数は劇的に減り、音楽制作会社は成り立ちません。スポンサーへのプレゼンは通りやすくなるかもしれませんが、肝心のクリエイティヴスキルは遠ざかって(馴れ合いの状態化)しまいます。IT社会が与える影響は、人間を飽くなき商業主義へとかり立てていき、反対に五感は失われていくばかりです。 1988年、私が音楽制作会社を起業した年のコカコーラのCMです。
https://www.youtube.com/watch?v=wBX6ESO4Ltw
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