女神と魔物
あれほど暑かったのに夏がトンズラしたかのような、極端な温度差にここ数日は体調管理が追い付きません。でもってスポーツと食欲の秋に突入なのですが、今年の夏は日本のスポーツのレベルを推し量るのに絶好でした。陸上やバスケットボールにバレーボール、その前は柔道、水泳と世界大会が相次いで開催されたのです。元来この私は、審判(レフリー)や審査員が判断する競技より、速さや跳躍を競う競技に大いなる魅力を感じます。スキーのジャンプ競技等は距離と飛型点のトータルで順位が決まるので面白さ半分と微妙なのですが。長くスポーツ競技を見てきた者にとって、何といってもその魅力は技術と精神の重なる瞬間を感じることです。審判や審査で決まるものは、その瞬間(ドキドキ感)を削がれるようで正直斜に構えてしまいます。数値にすれば8:2くらいの感動差でしょうか。その中にあって野球という競技は少し他と違う感覚を受けます。勿論、審判競技ですからドキドキ感は少ないのですが、野球独特の「間」が勝敗の「流れ」を変えてしまうほど影響力を持つからではないでしょうか。攻撃と守備がはっきり分かれる野球やアメリカンフットボールは、ボールゲームの中でもサッカーやバレーボール、バスケットボールと違い、攻守交代の時間がわざわざ設けられています。この交代時間が「流れ」を作り変えるのでしょう。特にチェンジ(交代)直前のプレーにそれを強く感じます。この夏の高校野球の決勝戦はまさにその「流れ」を大きく感じた試合でした。決勝にふさわしく同点のまま終盤を迎えましたが、試合の流れは完全に後攻のチームにありました。球場観戦していた方やTVをご覧の方ならどなたも感じていたと思います。しかし、それは8回裏の2アウト後にひっくり返ります。インターフェアと思った打者が審判のアウトの宣告に明らかに不満な態度を示したのです。TVカメラはその表情を見逃さず2度捉えました。私は思わず、「うむむ」となります。高校野球ではよく勝敗のポイントを「勝利の女神」とか「甲子園の魔物」という言葉で表現しますが、まさにこの時の打者の態度がそれに匹敵したのです。案の定、9回表の先頭打者に初球をホームランされます。球場は何とも言えない雰囲気になったでしょう。そのまま先攻チームが優勝をもぎ取ったのですが、高校野球が現在においても人気があるのは、技術もさることながら、高校生らしく、爽やかに、すがすがしく、正々堂々とプレーするからです。「女神」も「魔物」も気まぐれですが、どちらも技術と精神の狭間に鎮座してグラウンドを行き交いながら球児のプレーをつぶさに見ては、女神にも魔物にもなる典型的な決勝戦でした。
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