受賞の幸福は文学の敵
もはや利益の亡者と化したのでしょうか。もう芥川賞受賞作の映像化が発表されたのです。しかも通常とは違う世界展開に仰天します。相手はアメリカのオンラインDVDレンタル及び映像ストリーミング動画配信事業会社であるネットフリックス。完成した映像は日本を含め世界各国に配信されるとか。吉本興業と電通とのコラボレーションは無敵を思わせます。これだけの布陣を敷けば作品云々よりも、先ずビジネスの失敗はありません。一つの現象にこれほど素早く群がるのは、東京オリンピックのスタジアム建設やエンブレム問題を想起させます。想起というより連動の方が馴染む話でしょうか。オリンピックは国民の税金が予算のベースなので由々しき問題ですが、芥川賞は民間レベルの話。しかし、この私には並列に思えてしまいます。どこにフォーカスを充てるかで光にも闇にもなってしまう世の中を、上手に利用する猛者たちのレベルは計り知れません。業界における卓越したゼネラリストの集団が企画することに抜かりなどありませんし、世間のすべてをコントロールできるシステムがバックについたのです。作品が一人歩きするどころかラビリンスの世界に入り込むのでしょう。利益はオリンピック並みになるでしょうし、またそれが出来るだけの裏付けのある業界、それがマスメディアの権力なのです。ため息が出ますね。生前、太宰治がいみじくも「家庭の幸福は文学の敵」と親しい評論家に話し、三島も「俺も太宰と同じだ」と吐露したそうです。早めに次作品を世に出さないと、受賞者はラビリンスから抜け出せません。
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