最近はデリケートを感じない彼女ばかり?
「ナイアガラ・トライアングル2」1982年に発売されたLPアルバムで、大瀧詠一さんが佐野元春さん、杉真理さんとともに世に出したシリーズ第2弾は、リバプールサウンドでした。その中で、この私が今もって感じ入る曲が佐野元春さんの「彼女はデリケート」。この曲は2曲目に登場するのですが、この上ない疾風感とほとばしった訴求力は他を寄せつけないカッコいいナンバーです。初めて聴いた時に感じた爽快感は現在も変わりません。特にイントロ前の台詞は佐野さん自身の声で収録されていますが、内容から察するに、きっと佐野さん自身のデリカシー(delicacy)を言葉にしたものでしょう。髪を1ミリ切っただけでブルーになってしまう位、デリケート(delicate)なハートで書かれていると思われる歌詞のエレメンツ(要素や配列という意味)は独特で、都会の恋人たちの翳りを表現する詞などは、「英語の歌を日本語訳にしたらこうなる」的な言葉で切なく写実性に溢れたラブソングにしてしまうところにあります。そういう意味で、この私には未だに佐野さんの歌詞が一番カッコよく映るのですが、そのシルエットは今の若者たちにどう映るのでしょうか。最近TVやCMで見受けられる「アケスケ」的風潮にこの「ナイヤガラ2」は真っ向からメッセージします。「情緒は人間にとって最も大切な心の花びらなんだよ」。大瀧詠一さんが今も存命であれば「VOL.3」を期待するファンは私だけではないでしょう。台詞が収録されている「彼女はデリケート」は1991年版のCDヴァージョン。イントロ前の台詞です。
『出発間際にベジタリアンの彼女は 東京に残してきた恋人のことを思うわけだ。そう、空港ロビーのサンドウィッチスタンドで。でも彼女はデリケートな女だからコーヒーミルの湯気のせいで、サンフランシスコへ行くのをやめるかもしれないね』「ナイアガラ・トライアングルVOL.2」より。
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