ホログラムの世界
「スピンオフ」という言葉があります。訳すると、「派生させる」別に「国の機関などが開発した技術を、民間が使える技術として転用する」。以前このブログで私のスピンオフを書きましたが、たくさんの仕事を広告代理店経由で依頼されていた1991年は大きな企業のものが入りだした年。その中で未だに印象に残っているものがあります。NTTのVP(ビデオパッケージ)「近未来の日本の日常」編です。NTTは当時ポケベルから移動電話(現在の携帯及びスマホ)を中心にしたCM及びVPを頻繁にアピールしていた時期。「新しいVPの音楽を作ってほしい」との代理店の要望で、私は六本木の旧テレ朝通りにあるCG制作会社の会議室に呼ばれます。企画書の説明の後、VHSを見ながら音楽の打ち合わせに入ったのですが、それはまるでスピルバーグの映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」を地でいく内容に唖然とします。まだ粗編集の段階でザックリしていたのですが、内容はこうです。「男が仕事から帰ってくると家のドアが開いて全てのスイッチがONになり、リビングにあるスクリーンが12面マルチ画面で現れ、主人公は画面上のコンシェルジュにいろんな注文をする、コンシェルジュはそのすべてに応答する未来の日常」というものでした。世間はまだまだアナログがメインの日常でしたし、ITという言葉などは欠片もない時代です。本来のタイトルはここでは書けませんが、シノプシス(あらすじ)は聞いたこともないワードで溢れていました。ト書きは20XX年となっていましたが、「映画と同じころに実現する」と説明するではないですか。確認するまでもなく、この会話は今から24年前の1991年バブル時代のものです。「ということは2015年ですか?」「もうVODはできている」VOD?何の略語?私にはわかりません。「ビデオ・オン・デマンドといって視聴者が観たい時に様々な映像を視聴することができるサービスのこと」と言われても何のことやらさっぱりです。打ち合わせは不思議な空気感のまま、最後の場面に入りました。公園のベンチに腰掛けながら、お婆さんが孫の女の子に話しているカットなのですが、その孫はテレビ画面のサイズに切り取られた中にいるのです。その奥行のない画面を手で触りながら会話しているお婆さんと女の子の笑顔でEND。「これは何ですか?」「ホログラムといって、将来はこうなるよ」「ホログラム?」これ以上聞けません。聞いたら軽蔑されそうで言葉を呑み込んだのでした。今ではクレジットカードなどの二次元で活用されているホログラムですが、つい最近NHKが取材の中で「近い将来立体画像として日常のツールになる・・・」NTTは一体どこまで未来を完成させていたのでしょうか。
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