イメージはハッタリともいう
どんな場面でも大切に考えていることがあります。「印象ですべてが変わってしまった」なんてことが何度あったでしょう。マスコミ業界で仕事をしていた頃に嫌というほど味わいました。企画のプレゼン内容は個性的で斬新でしかも誰もがサムアップするのが良い、と思いがちでしょうが、ポジションによっては目立たないことが要求される仕事もあるのです。音楽制作の中では、「劇伴」というジャンルがあります。映画やテレビドラマなどの背景で流れる音楽を指すのですが、それは作品の邪魔にならず、しかし情緒感を見る者に与え、その場面を2倍3倍に印象深く膨らませることが要求されます。台詞のやり取りの背景とアクション場面とは自ずと違います。製作側は打ち合わせの時に、台本を読みながら情景をどのように豊かにイメージできるのか、私の能力を探ります。多くの監督や製作者は「こんな感じの音楽」と故意に抽象的な言葉で聞いてきます。製作者側の意図を即座に理解するには、沢山の経験と感性が必要ですが、大抵リクエストされる「こんな感じの音楽」は私の方で楽曲タイトルを答えるので、相手は頷くと同時に漸く本格的な打ち合わせに入るのでした。私自身、このように本職のスキルは四六時中磨いていましたが、この世界は見た目の印象8割ともいわれるだけに自分の演出も大切でした。最初の打ち合わせで名刺交換する数秒間が勝負。私は特に見てくれの印象に時間を費やしました。姿見鏡での百面相は当たり前で、話し方(語彙)や相手の目を見る自分の視線、手の仕草等をどれだけ練習したことでしょう。(ナルチシズム?)パントマイムをとり入れたこともありました。業界では第一印象が大きくモノをいったのです。それを俗っぽく言うならば「ハッタリ」になるでしょうか。実力に裏打ちされてのことは当然ですけれど、イメージを損なうとダメージは計り知れません。
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