現代プロデューサー心得
1980年代は私にとって、波瀾万丈の時代でした。人生の「イロハ」を吸収する絶好の機会でもあったこの時期に読んだ本の一つが「現代プロデューサー心得」でした。当時の私は、やる気は人一倍にあるのですが、知識に乏しい若者にすぎません。会う人ごとに「この人から何を盗めるか」と五感を張って対峙していました。いわゆる「背伸び」しながら仕事をしていたのです。格好も気にしました。パッと見を良くするために鏡を見ながらヘアスタイルをいじりますが、センターで分けたオーソドックスな髪型では幼く見えてインパクトがありません。ブラシで分け目をいろいろ変えてみるのですがグッときません。グリースを買ってきて頭全体に塗りたくってみるのですが、髪が長すぎてグチャグチャになり自分では手に負えません。「よし思い切ってベリーショートの頭にしょう」思い立つと行きつけの美容室へまっしぐら。散髪後、改めてグリースを塗ると、「おおっイケるんじゃない?」自画自賛したそれは、ロックンローラーばりのオールバックツンツンヘッドの誕生です。80年代後半は、このヘアスタイルで営業にと、広告代理店である世界の「電通」さんにも出入りさせていただいておりましたが、あの「DISCOVER JAPAN」で一躍国鉄旅ブームを巻き起こしたプロデューサーである著者が亡くなられました。87歳での逝去は、今は亡き私の父と同年齢。私は1986年8月15日の第1版第1刷の文庫本を本棚から探し出すと、表紙に手を添えながら感謝したのでした。
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