林檎ものがたり
漫画家の新谷かおるさんが66歳の誕生日となる4月26日、公式ツイッターで休筆を宣言しました。でも失礼ながら、この私は新谷さんの描く漫画を読んだことがありません。代表作である「エリア88」は小学館の「少年ビッグコミック」に新連載作品として、1979年から1986年までの8年間にわたり連載され、TVアニメやゲームにもなった大ヒット作品です。新谷さんは1972年「りぼん秋の増刊号」に掲載された「吸血鬼はおいや?」でデビューしたのだそうですが「りぼん」は少女漫画です。当時の男子が中学高校時代の頃に読んでいたのは「少年マガジン」「少年サンデー」女子は「少女フレンド」「マーガレット」が中心だったと記憶しています。高校時代に私が読んでいたのは「ミュージックライフ」「音楽専科」「FMレコパル」等の音楽を中心にした雑誌でしたが、卒業後、進学するために東京へ行くことになった田舎の高校生は、そこで少女漫画「りぼん」と出会うのです。「あれ?この感覚はなに?」1979年当時「りぼん」の看板漫画家の一人であった田渕由美子さんが描いた「林檎ものがたり」というラブストーリーを読んだ私は、画から音楽的なリズムを感じます。漫画を超えたファッショナブル性にフランス映画を見るような田渕作品は、画のタッチがアンニュイで、登場人物が世俗にまみれていないことに心の(音楽)琴線が乱されたのです。このシルクのような繊細さは、田渕さんの独特な感性からくるものだと感じた私は、その後も「林檎ものがたり」のエピソードⅡ、Ⅲを読み漁ります。男女が出会うきっかけの些細な出来事は、読者をトキメかせるのに十分で、背景に使われた大学のキャンパス内のサークル風景や学生食堂は、当時の受験生にオシャレなカレッジライフを提示したのでした。キャンパスをさりげない感じで読者に紹介する力は卓越していたように思います。私の音楽活動の原点である夢と希望とオシャレは、この「林檎ものがたり」からインスパイアされたのかも知れません。「りぼん」における田渕さんの代表的な作品は、早稲田大学在学中(1974-1977)に醸成されたのでしょう。80年代後半以降、第一線から退いたようでしたが、2000年代に漫画家として復帰しています。
https://www.youtube.com/watch?v=Vl6RB0iTjHI
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