「病院男」は終身刑
「年単位での経過観察が必要でしょうね」「年単位ですか?先生」最早絶句です。「病院男」はついに終身刑を言い渡されたような囚人のように呻いたのでした。いつものように私を呼ぶ声は「8番へお入りください」調子がいいのです。いよいよ最後の戦いとする戦場へ突入すると「先生、すこぶる体調がいいのですよ」元気はつらつの先制攻撃は冴えわたります。「そうですねー。数値が基準値を上回っていますね」俄然、前のめりになる私はさらにたたみ掛けます。「処方箋ももういいでしょうかね?」医師の返事次第では全面的に開放となる瀬戸際に、言葉を間違えてはいけません。「いえ」しかし若い医師は踵を返すと私の顔を正面に見据えて話し出します。「基準値を超えては来たのですが、これでいいというのは早計ですよ」「ふえ?」擬音がこぼれた私の口の中は乾いてきました。「この病気は月単位ではなく年単位で治療していく性質のものです。高い数値を下げる場合は月単位での治療も可能なのですが、低下している場合はミリ単位での変化になるので仕方ありません」「先生やっぱりこれは病気なのでしょうか」「ハイ、ですからゆっくり治療していきましょう」確かに身体はこの3か月で徐々に脂肪が減少し始め、むくみもなくなりましたが、何より一番感じているのが体中の骨が締まった事です。特に頭や顔を洗う時の手触り感、さらに手首が一回り締まったことは腕時計が空回りすることで分かります。この事実を「病院男」のトドメとして医師に伝えたかったのですが、本質論でこられては万事休す。対処療法でいいと考えていた私はさらに医師からの言葉にダメを押されます。「中性脂肪とコレステロールも高いのですから、ここから一気に手順を踏みながら改善していきましょう」私の前で医師は次回の日程をパソコンでクリックすると「12月7.8日の両日でよろしいです?」果てしない病院とのお付き合いが今始まったのです。
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