十月亭は東山茶屋街で
日曜のお昼は「東山茶屋街」とする私たちは、彼等より早めに前乗りして茶屋を1軒ずつ見て歩きます。自分の目で決めたかった私たち夫婦は歩き続けること10分、東山茶屋街の真ん中に「十月亭」と書いて「じゅうがつや」と呼ぶ、加賀料理(京風)のお店に目がいきます。その第一印象を信じて、お昼の食事処に選んだ私はこの「十月亭」の凄いところに驚愕するのです。「いらっしゃいませ」中に入ると元気な声が響きます。広いかまちを上がり、一枚板の大きなカウンターの前に腰を下ろすと、うれしい事に掘りごたつ式で足が伸ばせます。傍らのメニューを手に取って見れば、これまた粋なネーミングのお品書きです。「武士を4つ下さい」この言い方で注文したところ、カウンターの向こうで女将が申し訳なさそうに「武士は3つしかありません」気が利く返答です。「私は竹かご弁当でいいよ」私のカミさんがフォローした言葉に皆が納得するも、この武士とはなんぞや?ですが、正式には「武士の献立膳」といい「竹かご弁当」との2種類のみはランチだからでしょうか。ジャズが流れる気だるさと、古民家のマッチングの妙は、中庭の樹木をも際立たせる「十月亭」ですが、ここを紹介できた安堵感一杯の私は、親の介護話を切り出したことに後悔します。「年を重ねると皆わがままになるよね」慰問ライブもしている彼が話す介護士の苦労話は切実でした。ほどなくして「武士」と「竹かご」は私たち4人の前に。「これ食べてみて」私の鯛と治部煮をカミさんが食すると、言葉いらずのニンマリ顔。久しぶりの東山でしたが、予想外に上品なお店に当たり、しかもジャズの音色に耳の縁をくすぐられながら食事が出来たなんて、幸せの神様の配慮だったのでしょうか。私たち4人を特別な空間に誘ってくれた、このお店の醸し出す「古」(いにしえ)は加賀百万石のお国柄を充分に思わせるものでした。
https://www.youtube.com/watch?v=2xEELQotXeQ
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