喜乃屋でカンパイ
スタジオの向こうで彼が手を振っています。週末に浜松からやってきたのは、大学時代のクラスメイト有谷夫妻。小旅行の旅先に私の住んでいる街を選んでくれたのです。奥様は今回初めてお目にかかったのですが、虹色がかったような雰囲気はスタジオを和ませてくれるのに十分で、夫婦が生み出す光り方の一つの見本です。用意した椅子に座る二人を前にして、いきなりオリジナル楽曲を立て続けに3曲披露したのですが、この私、ギタリストの前で緊張したのか1曲目のイントロを弾き損ねてしまう下手なギターに、彼の目は織り込み済みの笑顔。何とか3曲目を終わらすと、共通の話題を探す私に助け舟がいくつも出ます。思い出話が次の思い出を呼び寄せるという、ノスタルジックな瞬間がスタジオの中で展開されたのは私たちならではでしょうか。やがて私からギターを手渡された彼は3曲目のオリジナル「SEASON」をおもむろに弾きはじめます。「その弾き方で歌いたいんだけど弾き語りでは無理なんだなあ」ボサノバ風に弾く彼の両手を羨望で見る私。「一緒にやれたらグランプリ獲れるよ」しかし、私のかけた言葉は彼の心の前で砕けながら散っていくのでした。和やかな時間はあっという間に過ぎます。楽器店スタッフの合図とともに私たち4人はスタジオを出ると、駅向こうのレコメンドされた割烹店へ。「喜乃屋(きのや)」と称するお店は、カミさんの「ママ友」情報でのイチオシでしたが、流石にどの料理もおいしいの一語。四方山話はここからが本番。彼らと花を咲かせながら飲む「手取川」と「のどぐろ」は実に実にうまいのでした。後半につづく
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