スピリチュアルな時
東京駅での待ち合わせがこんなにスムーズに出来たのは初めてじゃないでしょうか。改めて新幹線の素晴らしさを体現できたのですが、日曜日のこの日、私たちは中央線の高尾駅にいました。東京に長くいた私ですが、こんな田舎(失礼)に来たのは初めて。やり切れない思いも手伝ってか、気持ちが沈み込んで動けません。岩手から来た彼はこの私より度胸があるせいか、素振りはいたって普通。ほどなくタクシーを捕まえると10分もしないうちに病院です。面会手続きをした後、迷路のような廊下を歩いて病室の前で名前を確認すれば、やはり彼の名前です。奥様に促されて6人部屋の一番奥に通された私たちは、ベッドから目覚めた彼に声を掛けようと思うのですが、「やあ」としか言えません。こんな再会はみんな望んではいませんでした。看護師さんが用意してくれた車椅子に座る彼の後姿が小さくて悲しくなるのですが、面会ルームに座るやいなや、大学時代の話に花が咲きます。彼の記憶力は鮮明で私たち2人の方がダラシありません。時計をみるともう3時。面会の2時間はあっという間に過ぎましたが、途中、不思議な会話が交わされます。「それを夢で見たよ」「ええ?俺たちが会ったことをか?」「うん、1.2週間前にね」なんと大学時代のサークル仲間と開催した12月の「スタジオDEカンパイ」を夢で見たというのです。一瞬会話に間が空き、私は彼の瞳の奥を覗きます。一体何のチカラ?天からプレゼントをもらったような感覚に思わず後悔の言葉を口にします。「今の話を彼らに伝えていいか?聞いたら、きっとみんなはここへやってくるよ」私の配慮に欠けた言葉を聞いた彼の表情は、案の定、喜びとも哀しみともつかないものになりました。
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