悲しみの再会
「虫の知らせ」というのは本当なのでしょうか。大学時代の友人から年賀状が届きましたが、いつもと様子が違います。その文章は遠慮がちに小さく書かれてありましたが、私には葉書一面の叫びに感じられました。彼の年賀状に「闘病中」の文字は似合いません。それが昨夜の電話連絡ではっきりしました。書かれたのは奥様で、それは私の想像を遥かに超えた現実でした。努めて明るく話される奥様の言葉の一つ一つが私の胸を切り裂いていきます。と同時に、あの大学時代の楽しかった思い出がよみがえるのでした。彼の体格は体育会系のラガーメンばりで頑健でしたが、ハートはデリケート。クラスは違いましたが、住んでいた街が一緒だったこともあってか、よく一緒に飯を食べる仲になるのです。彼はハムカツとサラダが好きで、サラダは自分で作ってきたと自慢げに差し出したものです。草野球でも一緒で、彼はサード、私はセンター。キャンパスですれ違いざまに身体をぶつけ合う、本当に気心の通じた間柄でした。あれからそれぞれの道を歩み、30年以上が経った今、耳を疑う奥様の話に頷きながらも流れゆく涙はぬぐえません。過去と現在の狭間に茫然としながら電話を切ると、岩手にいるもう一人の友人に知らせたのですが、一刻も早く彼の元へ行かねばと気が焦ります。卒業後2年ほどした頃、私が絶望していた時期に彼は朝まで一緒に居てくれたことがありました。眠っている間に彼が書き残して行ったメモの言葉を忘れたことはありません。「俺が必ずよくなるようにするよ」今度は私が彼を励ます時がきました。「俺が来たからにはもう大丈夫」だと・・・。
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